[Interview] 乃木坂46・衛藤美彩「ファンの皆さんに支えられてここまで来た」初フロントシングルでファンとの絆を再確認

「突然のことすぎてパニックになって、もちろん嬉しいんだけど、『なんでこのタイミングで?』っていうのはすごく考えました」と胸中を明かすのは、人気アイドルグループ・乃木坂46の衛藤美彩。「パニックになった」と振り返ったのは、10月28日にリリースされるニューシングル『今、話したい誰かがいる』で、初めて選抜メンバーの1列目に抜擢された瞬間だ。

■アンダーから選抜へ 3列目から1列目へ

端麗なルックスに加え、歌唱力にも定評があり、MCもそつなくこなす。そんな高いポテンシャルとは裏腹に、衛藤はグループの結成から約2年間、シングルの表題曲を歌う選抜メンバーには1度も選出されることがなかった。音楽番組やイベントでは度々、諸事情で出演できなかった選抜メンバーの代役を見事に務めあげ、その存在感から「乃木坂46のスーパーサブ」と評されることも。
そんな「スーパーサブ」の呼び声に甘んじることなく、不屈の精神で選抜入りを目指し、7thシングル『バレッタ』で念願の初選抜。それから約2年間、8枚目を除く4作のシングルで選抜入りを果たした。

乃木坂46は選抜1列目と2列目のメンバーが“福神”と呼ばれるフロントメンバーに位置づけられるため、衛藤がこれまで務めていた選抜3列目というポジションには、ある種の葛藤が存在する。本人の言葉を借りるなら、それは「1歩前に行きたい気持ち」と「選抜に選んでいただいているありがたさ」との間で揺れるもので、彼女もまた、そんな「3列目の悩み」を抱えていたという。
「ファンの方はもっと前に行ってほしいから『フロントとか福神を目指そうね』って握手会とかでたくさん声をかけてくださっていて、でも私としては選抜にいるだけでもありがたいっていう気持ちが根にあるので、そんなに福神を目指すっていう感じではなくて、活動していく中で認められて上がっていけたらいいなとは思っていました」と長くアンダーを経験しているからこそ、控えめな気持ちが強かったようだ。

そんな思いのなか、迎えた13枚目シングルの選抜発表。「まず3列目に生駒ちゃんと若月と桜井の名前が呼ばれた時点で、『ああ、今回は変わるな』って思って。で、2列目で呼ばれなくて1列目で呼ばれて、最初は本当に『なんで?』と思いました」と3列目からの“飛び級”はまさに青天の霹靂。「(齋藤)飛鳥とか(星野)みなみとか、若い子たちがフロントに抜擢されるんだったら“これからの乃木坂を担う”みたいな感じで意味づけられるけど、私はお姉さんメンバーで、自分がなぜこのタイミングで前に来たんだろうって、その意味をすごく考えましたね」と喜びと戸惑いが交錯するなかで新曲の制作がスタートした。

■新しい立ち位置で感じたのは「責任感」

結成5年目にして初めて立った選抜1列目というポジションは、彼女にとって新鮮な経験の連続だ。
レコーディングでは「初めてAメロを歌わせていただきました」とにっこり。「今までの3列目の端っこって、サビにいく前のBメロを任されるんですよ。でも、今回は歌が始まってすぐのところ。Aメロを歌いたいっていうのが、個人的に小さい夢の1つだったんです」と声を弾ませる。

楽曲が起用されたCMの記者発表会にも出席。これまでフロントメンバーが務めてきた仕事に触れて、あらためて気づかされることも。「乃木坂全体のお仕事なんだけど、3列目やアンダーにいると、ちょっと自分は蚊帳の外にいるような気持ちになっちゃう時があった」とかつての自分を回顧。「乃木坂46の一員なんだけど、(CMに)自分は出てなかったりすると、どうしても責任感みたいなものが、今振り返ると足りてなかったのかな」と自らに厳しい視線を向ける。「今回は1列目だから責任感がより強くなったし、今回フロントを経験したことで、今後どの位置になっても、フロントと同じような気持ちで全てのお仕事に臨みたいと思ってます」と、このポジションでの経験を今後の糧として受け止めている。

 

立ち位置の変化を強く実感したのはPV。「今までって全然映らないんですよ(笑)。しょうがないんです。乃木坂の楽曲ってストーリー仕立てのPVが多くて、主人公がいて、その周りの子がいてってなると、やっぱり3列目ってどうしてもあまり映らない。なので『何分何十秒のココ!ココ!』ってファンの皆さんや家族と一緒になってやってたのが、今回はしっかり映っていたので、ありがたいことだし、『フロントになったんだな』って実感も湧いた。それにやっぱり責任感が一番違います」と充実した表情を浮かべる。

ジャケット写真も同様。同じく初めて1列目のポジションを担うことになった深川麻衣とともにType-Bのジャケットを飾った。「フロント4人じゃなくて2人ずつだったので、Type-B一面に2人だけっていうのがなんか夢のようというか……。今まで絶対なかったことだから、ファンの皆さんや支えてくれている人たちに、形としての恩返しになっていたらいいなって思います」。

■「私以上に私の可能性を信じてくれた」ファンに感謝

「恩返し」という言葉に象徴されるように、インタビューを通して伝わってくるのは、自分を支えてくれるファンへの並々ならぬ感謝の想いだ。乃木坂46のレギュラー番組で今作の選抜メンバーが発表された翌日、彼女たちは明治神宮野球場で全国ツアーの千秋楽を迎えた。
「アリーナの席に『みさみさ、十福神おめでとう』って手書きで書いた紙を持ってくださっている方とか、新曲を初披露したアンコールでも“美彩推し”のタオルを持って泣いてる方とかたくさんいらっしゃって、そういうのを見て『早く皆さんに直接お礼が言いたいな』って思いました」。

その機会は2週間後に行われた握手会でやってきたが、そこでもまたファンの言葉に心を打たれることに。「『今まで応援してきてよかった』とか『諦めなくてよかった』とか、素敵な言葉をかけてくれて、握手のレーンに入って私の顔を見た途端に泣き出す女の子のファンも。全国握手会って、個別握手会と違って予約とかじゃないから、行こうと思えば誰でも行けるんですよ。だから、もともと来る予定じゃなかったけど、仕事を早く切り上げてきて、スーツで息を切らしながら『来る予定じゃなかったけど、これだけ言いたくて』っていう人もいらっしゃって、すごい嬉しかったです」と感動した様子。
アイドルシーンには「ファンは推しに似る」という言葉がある。2年間選抜に選ばれることがなくても腐らず前を向き続けた彼女と同じように、彼女のファンもまた熱いハートの持ち主が多いようだ。

「選抜に入るようになって、最近好きになってくれた方もいるんですけど、アンダーの時から知ってる人が多いかな。ずーっと後ろにいた頃から私以上に私の可能性を信じてくれて、『絶対、美彩は前に行くべき人だから』っていって、私がめげそうになった時も、後ろから“わぁ~”っとみんなで押し上げてくれて……」。そう話す様子からは自分のファンを心底誇りに思っていることがうかがえる。「私のファンの人すごいなって思うのが、アイドルに興味がない友達や会社の人を握手会に連れて来てくれるんですよ。で、その人も乃木坂の曲を好きになってくれたりして。そうやってみんながコツコツ、ファンの皆さんも一緒に努力してくれて、本当に“ファンの皆さんに支えられてここまで来た”っていう言葉がピッタリです」とファンとともに掴んだ初フロントに感謝の想いを噛みしめる。

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